「お薬手帳」って、皆さんご存じでしょうか?
すでに持っている、あるいは聞いたことはあるけど、どんなものかはよくわかっていない…という方が実は多いのでは?
あまり意識したことのないかもしれませんが、お薬手帳は自分自身の体や日々の生活に根付く大切なものです。
この記事では、お薬手帳にかかわる次の4つについてご紹介していきます。
・お薬手帳について知っておきたい3つの基本
・お薬手帳がもつ3つの大切な役割
・お薬手帳にかかわる3つの注意事項
・紙とアプリ、どちらがオススメ?
なにげなく使っている人も、はじめて使う人も、一緒に確認してみましょう。
お薬手帳について知っておきたい3つの基本
お薬手帳(おくすりてちょう)とは、そもそもなんなのでしょうか。
誰しも一度は薬局で「お薬手帳はありますか?」と聞かれたことがあると思います。そして手帳の有無にかかわらず、処方内容が記載されたシールを薬と一緒にもらいますよね。
シールは手帳に直接貼り、保管することができます。この「処方された薬の情報を一か所にまとめておく」ことが、生きていく上で非常に重要なんです。
お薬手帳ってどんなもの?
お薬手帳とは、あなた自身に関わる次の5つの情報についてまとめておくための手帳です。
・いつ(処方された年月日)
・どこで(処方箋を発行した医療機関+調剤薬局)
・なにをどれくらい(処方薬名・量)
・使用方法(服用のタイミング、症状の程度など)
・その他注意事項
この5つの情報を一か所にまとめておくことで、あなた自身の病歴や処方歴を一目で確認することができます。
地域を問わず、全国で使用可能です。病院や症状ごとに分ける必要はありません。
どこでもらえるの?
お薬手帳は、全国の調剤薬局でもらえます。処方箋を出す際に「お薬手帳を1冊お願いします」と伝えるだけでOKです。
費用は一切かかりませんが、無駄に何冊ももらう意味はないので1冊だけお願いしましょう。
なお、お薬手帳は必ずしも調剤薬局でもらう必要はありません。先ほどの5つの情報に加え、次の5つの情報が記載されていれば自分で作ってもいいんです。
・氏名
・生年月日
・血液型
・連絡先(日中連絡のとれる電話番号)
・既往歴、副作用歴、アレルギー歴など特筆事項
こちらの5つの情報については、確認者がすぐわかるようページの一番最初にまとめておくとよいでしょう。
お薬手帳を一から作成するのであれば、デザインやサイズは自由に選ぶことができます。記入や保管のしやすさ、常に持ち歩くことを考えるとA6サイズがオススメですよ。
どうやって使えばいいの?
病院・歯科医院・薬局にかかる際、必ず受付で提出しましょう。
薬剤師さんに見てもらうことで、副作用リスクの低減や飲み合わせなど処方箋の内容に問題がないか確認してもらえます。
問題がなければ処方箋通りのお薬が薬局から処方されますが、その際にいっしょにもらえるのが薬歴が記載されているシールです。もらったら忘れずに貼っておきましょう。
手帳を提出しておけば、手帳にシールを貼ってから返却してくれることがほとんどですので、お願いしちゃいましょう。
また、お薬手帳を使うのは病院・薬局だけでおわりません。処方されたお薬を服用する際、次の4つについてお薬手帳に書き留めておくことが大切です。
・病院に行く理由となった症状(喉に痛み、発熱〇℃など)
・服用して出た想定外の症状
・服用後の薬の残数(途中で服用を止めた場合)
・(通院にかかわらず)市販薬の服用履歴
この中で特に気にしておきたいのが「服用によって想定外の症状が出た場合」です。
お医者様はもちろん飲み合わせや副作用を考慮した上で処方してくれますが、個々の体質の違いから「絶対に安全」はありません。
飲み薬でも塗り薬でも、服用後に異常を感じたら必ずその旨をお薬手帳に書き込みましょう。
発疹やけいれんなど目に見えるもの、頭痛や吐き気など体が思うように動かないなどできる限り事細かに書くのがオススメです。
症状がおさまるまでの時間やその時の対応もあわせて書いておけるとベストですね。
お薬手帳がもつ3つの大切な役割
自分の体にかかわる多くの重要な情報を記録できるお薬手帳ですが、ただ情報をまとめておわり…なわけではありません。
まとめた情報を活用することで「自分自身の体や生活を守る」という、とても重要な役割があるんです。
あなたの体の様子を代弁してくれるお薬手帳にはどんな役割があるのでしょうか。
自分の体と向き合うための材料になる
お薬手帳に日々の通院や市販薬を含めた薬の服用履歴を継続してまとめることで、次の3つが「見える化」されます。
・病にかかりやすい時期、頻度
・よくかかる病、ケガ
・合う薬、合わない薬(副作用、アレルギーなど)
風邪でいつも喉から痛くなる人と、まず熱が出る人…さまざまですよね。
自分自身がどのような症状がでやすく、どの時期になりやすいのか把握することで事前に対策が可能になります。
たとえば冬に喉風邪をひきやすいなら、あらかじめトローチを持ち歩いたり、職場に加湿器を置いてみてもいいですね。
熱が出やすい人は、自分が頻繁に行く場所の近くに内科があるか確認しておくと安心でしょう。
日頃から自分の体をコントロールすることはとても大切です。お薬手帳にただ情報をためるのではなく、有効活用していきたいですね。
全国どの病院でも自分の薬歴を伝えられる
お薬手帳は全国で使用可能なため、病院ごとに手帳を分ける必要がありません。
そのため、知らない土地で突然病院にかけこむことになっても、これを渡すだけで自身の病歴をすぐ伝えられます。自分自身がなんらかの要因で発声できないときも同様です。
以前合わなかった薬や出やすい症状、避けるべき治療法など一から説明する必要はないのです。医療関係者が治療する際の判断材料として、大変役に立つでしょう。
費用が安くなる
お薬手帳を持参することで、薬局で支払う費用が安くなる場合があります。それは「薬剤服用歴管理指導料」の部分です。
薬剤服用歴管理指導料とは、薬剤師が次の項目をチェックすることで、渡す薬を「正しく」「安全」にするための費用になります。
・服用する人の薬歴(副作用、アレルギーなど)
・飲み合わせ(薬同士の相互作用)
・薬そのものの効果
また、薬を渡すときに行う「正しく服用するための説明」の報酬も含まれています。
日々患者の服薬状況を収集・分析し、その記録を管理することで副作用等予想外の状況を未然に防いでくれているんですね。
この薬剤服用歴管理指導料は次の条件に全てあてはまる場合のみ、お薬代から120円(自己負担3割だと40円)減額してもらえます。
・薬局へお薬手帳を提出する
・6か月以内に同薬局で処方してもらったことがある
・門前薬局(病院の敷地内やすぐ近くにある薬局)ではない
たった120円?と思われるかもしれませんが、これが馬鹿にできません。病院は風邪を引いたとき以外にも眼科や皮膚科などさまざまな病気でお世話になります。
診療科目でわけずに病院へ行った回数を数えると、意外と多いことに気づかれるのではないでしょうか。
また、一度の病気で薬を受け取る機会が一回とは限りません。継続して通院・処方される機会があれば、小さな積み重ねが大きなメリットになります。
せっかく安くなるのであれば、ぜひ活用していきたいところですね。
余った処方薬ってどうしてる?
風邪などで病院から処方されたお薬、きちんと毎回飲みきっていますか?
基本的には飲みきるのが大前提です。
飲んだことで症状がおさえられても、体内ではまだ症状の原因を解消するためにがんばっています。病院や薬局側でもそこまで考慮して処方しているんですね。
それでも、忙しくて忘れてしまったり、もういいかなと服用をとめてしまうこともあると思います。
そんなとき、余ってしまった処方薬はどうすればいいのでしょうか。
うっかり処方薬を余らせがちな私が、長年とっている方法がこちらです。
・処方時にもらえる各薬の説明資料をすべて保管
・余った薬は種類ごとにプチ袋に入れて保管
・おくすり手帳に薬の残数を記入
・次回の薬局利用時に余った薬について薬剤師さんへ相談
「いつ・どこで・どんな理由で・何をどれだけ処方された」ことがわかる資料と薬を両方保管しておくことがポイントです。
これなら後からみてもどの症状で処方された薬かすぐわかるので、後日薬局で相談しやすくなります。
また、いつ頃の薬かも一目でわかるので、自分で決めた保管期間外の薬はスムーズに廃棄しやすいですね。
適正に管理することで薬の無駄な廃棄を減らし、余った薬の再活用で金銭的にもお得になります。
慣れないうちは面倒に感じるかもしれませんが、体調管理の一環として生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
お薬手帳にかかわる3つの注意事項
自分の体の証明書になりうるお薬手帳ですが、使用するにあたって守っておきたい3つの注意事項があります。
毎日使うわけではないからこそ、必要な時や緊急時に正しく使えるようにしておくことが大切です。
せっかく自分の体についてまとめているんですから、しっかり活用したいですよね。そのために、普段から心がけるべきことについて知っておきましょう。
常に携帯しよう
お薬手帳は薬局へいくときはもちろん、次のような緊急時にも大変役に立ちます。
・救急の対応を要する時
・意識喪失などすぐ意思表示できない時
・災害にあった時
・旅行や出張などかかりつけ医にすぐ行けない時
どの状況でもさっとすぐ出せる(あるいは見つけやすい)ように、お薬手帳をしまう場所は事前に決めておきましょう。
常に持ち歩くポーチを一つ決めてそこにいれておくと、カバンが変わっても忘れるリスクが減らせます。
また、自分で場所を伝えられない時のために、家族や友人、恋人など身近な人に必ず置き場所を伝えておくことが大切です。
何冊も作らない
お薬手帳は、どの薬局でも費用ゼロでもらえます。そのため、気づけばあちこちでもらった未使用のお薬手帳が何冊も手元に…なんてことも。
あなた自身の情報があちこちに分散してしまうと、持つ側も確認する側も混乱のもとになりかねません。せっかく集めた情報を活かせないのは、とてももったいないですよね。
未使用のお薬手帳は予備として保管しつつ、普段使いの手帳は1冊のみにしましょう。
お薬手帳を何冊も抱えないために、私はこんな風に管理しています。
・お薬手帳は最新の1冊のみ持ち歩く(切り替え時期のみ2冊)
・使い始めと終わりの年月日と通し番号を表紙に書く
・次の手帳の1/4程度埋まるまでは1つ前の手帳と合わせて持ち歩く
・記入欄がいっぱいになった手帳は過去分とあわせて保管
予備のお薬手帳をもてあますようであれば「予備は3冊まで」と決めて、それ以上は受け取らないようにするか廃棄してもOKです。
過度な装飾をしない
お薬手帳は必要な情報さえ記載されていれば、その形式に決まりなどはありません。
薬局でもらった手帳でも手作りの手帳でもOKです。中にはハンドメイドの表紙やカバーを作成し、飾り付ける方もいらっしゃいますね。
オリジナリティあふれる手帳は、日々持ち歩くのに愛着が持てますし、自分以外の手帳と取り違える心配も減らせます。
しかし、次の点には十分な注意が必要です。
・必要な情報が隠れないようにする
・細かいシールやラメ材は避ける
・香水やアロマなど香りづけは厳禁
装飾に夢中になり、本来必要な情報が見えなくなってしまっては本末転倒です。
手帳カバーを使用する際は、必要な情報の部分だけ枠をもうけたり、カバーにも同じ情報をのせるなど工夫しておくとよいですね。
凹凸があるシールやラメ材は薬を取り扱う薬局で異物混入の危険を増してしまいます。剥がれやすいシールやパーツ、手にうつりやすいものは避けるのが無難でしょう。
また、無臭が原則の病院や薬局では、香水など合成香料が含まれるものは厳禁です。
他の患者の体調を崩す原因になったり、異臭など薬の品質の変化に薬剤師が気づきにくくなる可能性も考えられます。
自分好みの香りを持ち歩きたいときは持ち歩くハンカチ程度にし、お薬手帳に臭い移りのないようにこころがけましょう。
紙とアプリ、どちらがオススメ?
日々の生活に欠かせないお薬手帳、実は紙の手帳のほかに電子版(アプリ)があることはご存じでしょうか?
現在、スマートフォンの普及率は8割を超えるといわれています。今までの紙主体のサービスに電子版が加わり、選択肢の幅が広がることでより便利に、使いやすくなりました。
では、紙とアプリ、どちらを使うのがよいのでしょうか。
比較しやすいよう、それぞれのメリット・デメリットをまとめてみました。今からでも使えるオススメお薬手帳アプリもご紹介しますので、あわせてみていきましょう。
見慣れた紙の手帳は自己流でまとめやすい
皆さんが見慣れた、また生活に深く浸透しているお薬手帳といえばまだまだ紙が主流ですよね。時代が電子化の波にのっていくなかでも、紙の手帳にはこんなメリットがあります。
・シールを貼るだけで最低限の記録ができる
・緊急時に渡すだけで薬歴など正確に伝わる
・いつも同じ場所に保管できる
・必要な情報のまとめ方は個人の自由
昔ながらのアナログな分、電子機器に依存せずに持ち歩けるのが最大のメリットですね。また、自分にあった形でまとめられることも大きな利点です。
一方、このようなデメリットもあります。
・薬局でもらうか自作するかの二択
・市販薬の薬歴は手で書き込む必要がある
・情報の記録以外の役割がむずかしい
紙の手帳はシンプルな分、手帳として機能以上の役割をもたせることがむずかしいです。
また、今多くの種類が販売されている市販薬をいちいち手書きで記録するのは骨も折れますし、記入ミスを招く恐れもあります。
従来の役割を大きく超えてきたアプリ型手帳
スマートフォンの普及がすすんだ現在、ユーザーの生活により馴染むためにお薬手帳の電子化が積極的に進んでいます。
従来の紙の手帳同様の役割を超え、次のようなメリットが付加されているのが特長です。
・スマホがあればどこでも入手可能
・お薬情報を手入力や読み取りで記録できる
・記録した情報から毎日の服薬スケジュールをお知らせ
・家族など複数名のお薬情報を一括管理
・薬局へ行かずに処方せんの提出が可能
薬歴を記録するためのお薬手帳に、情報の自動登録や共有機能、薬を受け取る際の待ち時間短縮など様々な役割が追加されました。
利便性があがることで、日々の生活がさらにスムーズになります。世代の多様な家族であれば、なおその恩恵を感じやすいでしょう。
お薬情報の入力に、QRコードやバーコードでの自動読み取りが可能なアプリもあります。
薬歴は命にかかわる可能性もありますので、ヒューマンエラーを限りなく減らせるのはとても大きなメリットですね。
しかし「利便性があがる」ということは、常にデメリットがつきまとうものです。
・アプリによっては手入力で記録する必要がある
・スマホ画面越しなので文字が小さくなりがち
・アプリの種類が多くてどれを選べばいいのか迷う
・電子機器の破損やアプリの不具合があると確認できなくなる
・サービス終了時にデータを保存・移行できる保証はない
アプリ版お薬手帳の最大のデメリットは「電子機器に依存している」点です。
現在普及しているスマートフォンやアプリは、この先ずっと存在が保証されるものではありません。
昔の主流がポケベルやPHSだったように、いつか新たな電子媒体がでればそちらへ移行していくでしょう。
そのときに現在のサービスが継続されるのか、移行できるのか、終了するならそれまでの情報を手元に保管できるのか…。
完全に電子媒体に依存してしまうことは、少なくとも現段階において大きなデメリットとなりうるでしょう。
結局どっちがオススメ?
私個人の意見ですが、紙とアプリを組み合わせて使うのが断然オススメです。
処方薬のまとめは紙の手帳をメインに使いつつ、アプリにもあわせて登録しておきましょう。バーコードなどで読み取ればいいので、ささっと済ませられます。
市販薬は先にアプリで登録しておき、手のすいた時にアプリの画面を印刷して紙の手帳に貼ると手書きの手間を省けますね。
これなら、万が一事故にあってスマホが壊れても、薬歴を共有する人と連絡がつかなくても、紙の手帳も使えるので安心です。
紙もアプリもメリット・デメリットがありますが、それぞれのいいところを上手く活用し、生活に安心をプラスしていきたいですね。
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まとめ|肌身離さず持ち歩きたい「自分の体の証明書」
お薬手帳は、持ち主の命を守ってくれるたいせつな「自分の体の証明書」です。その媒体は現代に沿ってさまざまな形をとり、昔よりもなお人々の生活によりそっています。
ただ薬歴をまとめることは、健康な普段の体ではあまり恩恵を感じにくいかもしれません。
それでも平和な日常で使い続けることが、万が一が起きた自分の命を救うことにつながります。
なにげなく持っていた人も、はじめて手にした人も、この記事を読んでぜひお薬手帳を生活の一部に加えてみてくださいね。