ある日突然会社の都合で、あるいは自分の意思で仕事を辞めて無職になった。その時、まず誰もが心配するのは生活面の不安ですよね。
この不安を取り払い、安心して仕事を探せるよう助けてくれる制度があります。「失業保険」です。
仕事を辞めないかぎり、まず縁のない失業保険。突然「受給できますよ」と言われても、まず何から知ればいいのかわからないですよね。
そこで、この記事では「初めて失業保険を受け取る当時の自分が知りたかった」ことを元に27の疑問に答えてみました。
私が失業保険を受給した時の実体験も交えつつ、この記事にできる限りの情報を詰めこんだつもりです。
初めての失業保険で不安な人、疑問がつきない人はぜひ読んでみてくださいね。
基本編
失業保険は仕事を辞めないかぎり、まず縁のないもの。なので、初めて「仕事を辞める」経験をした人は、何も知らなくて当然です。
まずは、失業保険の基本知識について、一緒に見ていきましょう。
失業保険ってなに?
失業保険は正式名称を雇用保険(のうち失業者給付)といい、条件を満たせば誰でも利用できる公的保険制度の1つです。
「失業者が生活を失う心配をせずに、1日も早く再就職するために求職活動へ専念する」
上記を目的に、基本手当・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4種類が給付されます。
このうち、最も受給頻度の高い基本手当(求職者給付ともいう)は、総じて失業保険と呼ばれることが多いんですね。
就職促進給付:再就職手当・就職促進定着手当・就業手当など早期再就職を促すことを目的とした給付
教育訓練給付:能力開発やキャリア形成を目的とした教育訓練受講費用の一部補填、また受講にかかる経費負担を目的とした給付
雇用継続給付:特定の環境下で雇用を継続しにくいけど労働意欲がある人の生活費を補填することを目的とした高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付の3つから成る給付
雇用保険による給付金は全て非課税なので、所得税など課税の心配はありません。実際、受給年の確定申告でも考慮する必要がありませんでした。ありがたいですね。
失業保険の受給手続きはどこでできるの?
失業保険もとい雇用保険の手続きは、全国のハローワークにて行えます。
ハローワーク(公共職業安定所)は、民間の職業紹介事業等では就職へ結びつけることが難しい就職困難者を中心に支援する最後のセーフティネットとしての役割を担う、国(厚生労働省)の機関です。
出典:厚生労働省HP
就職困難者を就職に結びつける…とありますが、実際には転職を考えている人にも職業紹介をしてくれます。
ハローワークという愛称は、職業安定所のイメージ向上を目的に1989年の一般公募から決定されました。
ハローワークならどこでも良いわけではなく、自分の住居がある住所を管轄するハローワークで手続きする必要があります。
「〇〇市(自分の住所) ハローワーク」
「〇〇県(自分の住所) 管轄 ハローワーク」
などで検索すると、詳しい管轄区域が調べられますよ。
失業保険の受給資格って?
さきほど「条件を満たせば」と言ったとおり、失業保険は仕事さえ辞めれば無条件にだれでももらえるものではありません。
受給するには、2つの条件をクリアする必要があります。
1つ目は、受け取る本人が「失業の状態」であること。
①「失業の状態」を満たす3つの条件
- 「就職したい!」という積極的な意思があること
- 健康状態や生活環境に問題がなく、いつでも就職できる状態であること
- 自発的に職を探しているが、まだ就職していないこと
「生活環境に問題あり」とは介護・看護や出産・育児など自発的に職に就くことが難しい状況を指します。
せっかく就職できても、安定して仕事に行けないようでは意味がないですからね。
病気や怪我、妊娠や介護などが理由で積極的な就職活動ができない場合、失業保険の受給期間の延長が可能です。
※詳細は、後述「失業保険は延長できる?」参照
また、雇用保険における「就職」は正社員にかぎりません。
パートやアルバイト、家業(農業・商業)や自営業、ボランティアや研修も「就職して働いた」とみなされる場合があります。
もし失業後に上記のような活動をしたら、実働時間など細かく控えておきましょう。
2つ目は、失業保険の受給資格があること。
失業保険は雇用保険ですから、当然雇用保険料をおさめた期間(=雇用保険の被保険者期間)がある人のみ受け取る資格が発生します。
失業保険における離職理由は大きく3つに分けられます。
失業保険における3つの離職理由
- 一般的な離職者:自身の意思や都合に順ずる自発的な退職
- 特定受給資格者:企業の倒産や解雇による強制的な離職
- 特定理由離職者:自身の意思に反する正当な理由による退職
当人の都合による転職や起業などの自己都合退職は、一般的な離職者にあたります。これが一番数の多い離職理由です。
特定受給資格者はいわゆる会社都合退職にあたり、倒産のほか事業所の廃止・移転による就業困難が該当します。
1ヶ月に30人以上の離職者が発生する大量雇用変動届が提出されたことによる離職もここですね。
特定理由離職者は自己都合であっても「本人の意思や都合に関係なく、退職せざるをえなかった」ケースが該当します。
労働契約の更新希望が認められなかった、常時看護が必要な家族のための退職した、結婚による引越で通勤不可能になった、など…。
自分の意思に反する正当な理由に今の自分が該当するかは、受給資格決定時に判断されます。
この3つの離職理由のうち、どれに該当するかによって求められる被保険者期間が変わってきます。
②失業保険の受給資格を満たす条件
- 自己都合退職:離職日以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上ある
- 特定受給資格者・特定理由離職者:離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上ある
失業の状態と受給資格の2つを満たせているか、受給手続き前によく確認しておきましょう。
失業保険はいくらもらえるの?
失業保険の受給額は、基本手当日額×所定給付日数で決定します。
基本手当日額の計算方法
退職前6ヶ月の給与総額 ÷ 180(日) × 45%~80%(給付率)
所定給付日数(離職日時点の年齢と被保険者期間)
①倒産・解雇・一定の要件を満たす雇止めで離職された場合(②を除く) | ||||
年齢 | 雇用保険被保険者期間 | |||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
~29歳 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳~34歳 | 120日 | 180日 | 210日 | - |
35歳~44歳 | 150日 | 180日 | 240日 | 240日 |
45歳~59歳 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳~65歳 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
②障害者等就職が困難な場合 | ||
年齢 | 雇用保険被保険者期間 | |
1年未満 | 1年以上 | |
~44歳 | 150日 | 300日 |
45~64歳 | 150日 | 360日 |
③①・②以外の全て | |||
年齢 | 雇用保険被保険者期間 | ||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
退職前半年分の給与のおよそ1日分を算出し、給付率を掛けます。この金額が上限を超えず、下限を下回らなければ、これが賃金日額です。
ここに、年齢と賃金日額によって決まる給付率を掛けます。出た金額が基本手当日額の上限を超えず、下限を下回らなければ確定です。
賃金日額・基本手当日額の上限・下限額一覧
賃金日額の上限・下限額(令和3年8月1日時点) | |
上限 | |
~29歳 | 13,520円 |
30~44歳 | 15,020円 |
45~59歳 | 16,530円 |
60~64歳 | 15,770円 |
下限 | |
全年齢 | 2,577円 |
基本手当日額の上限・下限額(令和3年8月1日時点) | |
上限 | |
~29歳 | 6,760円 |
30~44歳 | 7,510円 |
45~59歳 | 8,265円 |
60~64歳 | 7,096円 |
下限 | |
全年齢 | 2,061円 |
所定給付日数は、離職日時点の年齢・被保険者期間・直近の離職理由の3つから決まります。具体的な日数は表を参考にしてくださいね。
離職日時点で65歳以上だと失業保険は受給できない?
離職日時点で65歳以上でも、受給資格を満たせば高年齢求職者給付金を受け取ることができます。
高年齢求職者給付金を受け取るための条件
- 離職日時点で65歳以上であること
- 離職日時点で雇用保険被保険者であること
- 離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上あること
- 「失業の状態」を満たしていること
給付率は年齢・賃金日額から決定されます。しかし、45~80%とはっきりしない組合せもあり、手元の資料のみで正確な受給金額の試算は難しいでしょう。
ざっくりとした目安として、ハローワークへ行く前に一度計算してみてください。
参考までに、30代前半会社員の私が会社都合で離職後に受給した際の給付率は65.7%でした。
失業保険の給付に年齢制限はある?
結論からいえば「年齢制限はありません」。
たとえ10代でも80代でも、条件を満たせば失業保険を受給することは可能です。
実際、ハローワークへ失業保険の手続きに何度か足を運んだ際、20代の方から自分の親世代に近い高齢者まで幅広く見かけました。
時勢や景気などによって世代や性別に偏りはあるかもしれませんが、年齢を理由に断られる可能性はゼロと断言できます。
とはいえ、受給条件の1つが「一定期間雇用保険の被保険者であること」なので、義務教育中の受給はなさそうですね。
失業保険は一度もらうと二度ともらえない?
こちらも結論からいいますと「失業保険に回数制限はありません」。
ただし、何度目の受給であっても、失業保険の受給資格をえるための条件を満たす必要があります。
先述のとおり、受給資格を満たす条件の1つは「離職日以前〇年間に被保険者期間が通算〇ヶ月以上ある」こと。
そして、失業保険を受給する際はそれまでの通算被保険者期間から受給金額を算出します。
つまり、一度失業保険を受けた時点で被保険者期間は一旦リセットされ、ゼロに戻るということ。
次にまた失業保険を受給するには、改めて最低12(または6)ヶ月分雇用保険に加入する必要があるんです。
確かに、数か月単位で就職と離職を繰り返す人に給付してしまっては「国民に安定した職と生活を」とはなりませんものね。
失業保険は失業の状態で受け取るものですから、できる限りその回数は少ない方が望ましいです。しかし、仕事との相性なんて勤めてみなきゃわかりません。
頼りすぎはよくないですが、実際の受給に回数制限はないことを頭にいれておくとよいでしょう。
失業保険を不正受給したらどうなるの?
失業保険は条件を満たした人にかぎり、受給が許されるものです。その条件を偽りや不正でごまかして受給しようとした場合、そのすべてが「不正受給」になります。
不正受給とみなされる行為
- 雇用された事実を隠し、申告した
- 偽りの求職活動実績を記入し、申告した
- 就職の事実をでっちあげ、再就職手当等の支給申請をした
- 会社役員に就任した事実を申告しなかった
- 離職票に虚偽の内容を記載し、申告した etc
上記のような不正行為が行われた時点で、不正受給と判断されます。実際に支給に至ったかどうかは関係ありません。
不正受給が認められると、不正行為が実際に行われた日以降の失業保険について以下の処置がとられます。
- 失業保険を支給する権利が消失
- 不正受給した失業保険の返還命令
- 不正受給した額の2倍にした金額の納付
不正受給と判断した翌日より年利5%もの延滞金が課せられ、返還や納付をしないまま過ごせば財産の差押えに至ることも。
悪質だと認められれば、刑事告発で詐欺罪など処罰される可能性もあります。
条件さえ満たせば国民が誰でも平等に利用できる制度だからこそ、嘘偽りはだめですよね。ルールを守って、誠実に、正しく受給しましょう。
受給手続き編
失業保険の受給手続きは、以下の流れですすめていきます。
失業保険受給手続きの流れ
- 離職後、退職した企業から必要書類が届くのを待つ
- ハローワークで求職の申込をする
- ハローワークが受給資格の確認・決定を行う
- 受給資格の決定をうける
- 雇用保険説明会に参加する
- 待機期間(または給付制限)満了まで待つ
- 求職活動を開始する
必要書類を持ってハローワークへ行き、求職申込&受給資格決定後は待機期間or給付制限満了までひたすら待つ。満了まで特に問題がなければ、無事受給手続きの完了!
と、流れ自体はシンプルですが、ハローワークに行くのも初めてだった当時の私は本当に右も左もわからず、本当に不安で…。
同じように不安を抱えている人が少しでも安心できるよう、当時の私が知っておきたかったことを中心に詳しくまとめてみました。
私自身の経験も書き留めてありますので、参考にしてくださいね。
失業保険はいつから受給手続きができる?
失業保険の受給手続きには、いくつか特定の書類が必要です。詳細については後述しますが、これには退職した企業から離職日翌日以降に送られてくるものが含まれます。
仮に正式な離職日まで有給を消化をしても離職日以前に送られてくることはないので、とりあえず届くのを待ちましょう。
必要な書類が手元に揃い次第、ハローワークへ向かえばOKです。
失業保険の受給手続きに必要なものは?
ハローワークへ向かう前に、失業保険の受給手続き申請に必要なものを確認しておきましょう。
受給手続き申請に必要なもの
- 雇用保険被保険者離職票(-1、2)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード・通知カード・住民票記載事項証明書など)
- 身分を証明するもの(運転免許証・マイナンバーカード・写真付資格証明書など写真付身分証明1点または公的医療保険被保険者証など写真なし身分証明2点)
- 証明写真2枚(縦3.0×横2.4cm、正面上三分身、できる限り最近のもの)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
- 本人の印鑑
- (※退職した仕事が船員だった場合、船員保険失業保険証・船員手帳)
雇用保険被保険者離職票は、企業から送られてきたものをそのまま持参すればOK。身分証明と個人番号確認書類については、マイナンバーカードにすれば1つで済みますよ。
証明写真は、よほど年数が前のものでなければ問題ありません。私はちょうど1年前に撮ったものを提出しましたが、何も言われませんでした。
失業保険の振込先になるので、預金通帳は振り込んでほしい口座のものを持参してください。
求職申込ってどうすればいいの?手続きに時間はかかる?
必要書類を持ってハローワークへ向かいましょう。着いたら、まずは総合受付へ行ってみてください。
私が行ったハローワークでは混雑を防ぐためか、何かを言う前に入口から総合受付の列に誘導されました。
受付では「失業保険を受けたい」と一言伝えればOK。必要書類を確認後、どこの窓口へ行けばいいのか親切に教えてもらえます。
あとは窓口近くの書類提出BOXへ必要書類をいれ、名前が呼ばれるのを待つだけ。
呼ばれたら窓口で担当者の説明を聞き、「働く意思がある(求職申込したい)」旨を伝えましょう。
ちなみに、ハローワークは常に人が絶えない場所ですが、
- 火・水・木曜日
- 朝一または午前中の早い時間
- 毎月5日以降
- 雨・雪の日
を選ぶと比較的空いていますよ。
逆に連休や週明け、求人の増える月初はかなり混むので注意です。
私はたまたま月半ばの水曜日&時間は午前中に行ったためか、着いてから1時間程度で受給手続きの全てが完了しました。
かなりスムーズな方だと思うので、お急ぎの人は事前に管轄ハローワークの混雑状況を調べておくことをオススメします。
手続きって具体的になにをするの?
窓口では、次の流れで担当者の方から説明や確認が行われます。
窓口で行われる手続き
- 受給資格を満たしているかの確認
- 離職理由についての確認・判定
- 受給資格の決定
離職理由について企業側の記載に異議がある場合は、ここで申し立てます。
- 「事前に話して合意した退職理由と異なることが書かれている」
- 「本来会社都合のはずが企業に自己都合での退職を強要された」
詳細は後述しますが、自己都合・会社都合は失業保険の受給内容に大きく影響します。
離職理由が自分の認識する事実と異なる場合は、担当者へ必ず伝えましょう。担当者の方は失業者の数多の事情を聞いているプロなので、親身にしっかり聞いてくれます。
異議申し立てをする場合は、訂正届(補正願)とその内容を証明する資料を揃え、ハローワークへ提出しましょう。ハローワークが企業へ連絡し、最終的な判断を下します。
企業側が記載した離職理由が特に問題なければ、その旨を伝えて手続きは終了です。
手続き完了時に受け取るものは?
受給手続きが完了し、無事受給資格が決定すると以下の書類を受け取れます。
受給資格決定時に受け取るもの①
- 雇用保険受給資格者証
- 失業認定申告書
- 雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり
- ハローワーク受付票
- 基本手当の支給が始まる時期は?(待機期間など説明資料)
- 就職が決まったときは?(再就職手当など説明資料)
- 認定カレンダー
私が失業保険を受けた時期は、新型感染症拡大防止対策として雇用保険説明会は中止になりました。代わりに、Web配信された制度内容説明DVDを視聴。
本来の流れであれば、受給資格決定から約1週間後に雇用保険説明会へ参加しなければなりません。
その参加をもって、雇用保険受給資格者証・失業認定申告書が交付されます。失業認定日が判明するのも、本来はこのタイミングが多いようですね。
雇用保険受給資格者証には、賃金日額や基本手当日額、給付日数が記載されています。これでハローワークが決定した総受給金額が判明するので、ぜひ計算してみてください。
また、今後失業保険を受け取るために欠かせない「失業状態を報告をする失業認定日」もここでわかります。「〇型-〇曜日」というやつですね。
型:1ヶ月の間でどの週に該当するか示すもの。ハローワークの認定カレンダーで確認できる。
他に、私がハローワークで受給手続きをした時はこんなものも受け取りました。
受給資格決定時に受け取るもの②
- 雇用保険受給者の皆様へ(失業認定の補足資料)
- ハローワーク利用ガイド
- 求職者マイページのご案内
- 雇用保険受給手続きをした皆さまへ(障害者など就職が困難な人への補足資料)
- 早期就職支援コーナーのご案内(再就職支援プログラムの説明資料)
- ハローワーク〇〇就職ガイド(履歴書の書き方など)
受け取った書類のうち、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書は毎回失業認定日に必要になるものです。紛失しないよう気をつけましょう。
手続き完了後、待期・給付制限を経て失業保険の給付期間が始まることになります。
待期ってなに?
失業保険の給付期間は、受給資格決定日から始まるわけではありません。まずは受給資格決定日から「失業の状態」が通算7日間経過するのを待つ必要があります。
この期間は「待期」と呼ばれ、離職理由に関係なく全受給者共通で実施されるものです。
待期は、本当に「失業の状態」にあるか確認・判断・事務処理するための期間です。受給手続き後すぐに支給を始めないことで、失業保険濫用防止対策も兼ねています。
給付制限がない場合は待期満了をもって、失業保険の給付期間が開始されます。
給付制限ってなに?
私は特定受給資格者に該当したので、待機期間7日のみで支給期間が始まりました。
しかし待期が終わっても、まだ支給が開始されないケースもあります。それが「給付制限」です。
正当な理由のない自己都合による退職や懲戒解雇などで退職した場合、給付制限を受けることになります。
「自分の都合や行動で退職したんだから、ある程度貯蓄や職探しの余裕があったはずだよね」
という考えに基づいたもので、この給付制限期間が終わらないと失業保険の支給期間は始まりません。
また、離職日やその理由によって給付制限の期間が変わります。
離職理由によって変わる給付制限期間
給付制限が3ヶ月:正当な理由のない自己都合退職かつ離職日が令和2年10月1日以降
給付制限が2か月:自己の責めに帰すべき重大な理由による退職または令和2年9月30日以前の正当な理由のない自己都合退職
私が失業保険を受給した当時は自己都合退職による給付制限は一律3ヶ月間でしたが、令和2年10月1日以降は一部緩和されたようです。
この給付制限最終日の翌日から、やっと失業保険の支給対象期間にはいります。
上記の離職理由に基づく給付制限のほか、以下のケースに該当する場合も給付制限がかかります。
- ハローワーク等が紹介する職業に就くことを拒否したとき
- ハローワーク等が実施する職業指導を正当な理由がなく拒否したとき
- 指示した公共職業訓練を拒否したとき
- 公共職業訓練を自己都合で中途退校したとき
これらの状況が発生する給付制限は、発生日から1ヶ月間です。
なお、給付制限期間中に必ず初回の失業認定日がありますが、これに行かないと「待期」満了が認められません。
給付制限が何か月であれ、忘れずにいくようにしましょう。
失業保険に期限はある?
失業保険の受給には、受給期間という期限が存在します。
この受給期間中に失業保険を受け取りきらないと、本来受給できる失業保険は消滅してしまうので注意が必要です。
失業保険のうち基本手当を受けられる期間は、原則として離職日翌日から1年間になります。
所定給付日数が330日の場合は1年+30日、360日の場合は1年+60日です。
失業保険の目的は「早期再就職の促進」ですから、失業後すぐ就職する意思がない人には給付する必要がない、ということですね。
手続きに行く日は任意ですが、必ず受給期間の期限は事前に調べておくことをオススメします。
なお、この期限は特定の条件を満たす場合のみ、延長が可能です。
失業保険は延長できる?
離職日翌日から1年間のみ受給できる失業保険ですが、以下のいずれかの理由に該当する場合はその期間の延長が認められます。
受給期間の延長を可能とする理由
- 病気
- けが
- 妊娠
- 出産
- 育児(3歳未満)
- 看護(小学校就学前の子)
- 看護(親族等)
- 配偶者の海外勤務に同行
- 一定のボランティア活動
上記理由により、離職日から引き続き30日以上積極的な求職活動ができないとき、その日数分を受給期間に加えられるんです。
たまに勘違いされる方がいますが、受給期間の延長であって所定給付日数が増えるわけではありません。ご注意ください。
受給期間の延長を希望する場合は、積極的な求職活動ができなくなってから31日目以降になるべく早めに手続きしましょう。
ハローワークで以下の3つを提出し、延長が認められれば受給期間延長通知書が発行されます。
受給期間延長に必要なもの
- 受給期間延長申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 延長理由に該当する事実を証明する書類
なお、病気やけがを理由に15日以上働けない状態になった場合は、傷病手当への切り替えが認められることがあります。
詳細は後述しているので、そちらをご参照ください。
求職活動・失業認定報告編
受給資格決定後、雇用保険説明会・待期・給付制限を経て、失業保険の支給期間が始まります。ただし、支給には一定の条件を満たすことが必要です。
その一連の流れがこちら。
求職活動~失業認定の流れ
- 求職活動を行う
- 失業認定日に失業認定報告書を提出
- 失業が認定され、基本手当が給付される
- (これを支給終了日まで4週間ごとに繰り返す)
- 支給終了
先述のとおり、受給者は「積極的な就職の意思をもち、自発的に職を探している」ことを前提に失業保険が受給されます。
その証明として一定の求職活動を行い、その内容をハローワークへ報告し、認めてもらう必要があるんです。
認定にはどれくらいの求職活動が必要?
失業認定日は、4週に1度のペースで設定されます。この4週の間に、求職活動実績に該当する行動を最低2回行わなければいけません。
以下の場合は、1回分の実績のみで失業認定が可能です。
- 求人への応募
- 次回失業認定日までの日数が7日以上14日未満
- 雇用保険法22条第2項に規定する就職困難者
- 給付制限がない人の初回失業認定日
実際に行った求職活動の内容は失業認定申告書に記入し、失業認定日にハローワークへ提出します。
求職活動の具体的な「実績」って?
失業認定に欠かせない求職活動として認められる具体的な活動が、こちらです。
求職活動実績として認められる活動
- 雇用保険説明会への参加
- 求人への応募
- ハローワークや民間職業紹介事業所等による職業相談・職業紹介
- ハローワーク等による各種講習・セミナーの受講
- 民間職業紹介事業所等が実施する求職活動方法など指導セミナーの受講
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構などによる職業相談・各種講習等の受講
- 再就職に関わる各種国家試験の受験
- 再就職に関わる資格試験等の受験 etc
基本的に再就職に直接つながる行動であれば、実績として認められます。
職業紹介・職業相談・講習受講・セミナー受講は、連続して活動した場合でも各1回分として数えてもらえますよ。
求人情報の閲覧や知人への紹介依頼、転職サイトや派遣会社の登録は実績としてカウントされないので注意。
ただ「求人情報にふれる手段を得た」だけではだめなんですね。
自分の活動が実績として認められるか不安な人は、事前にハローワークに相談しておきましょう。
ハローワークの職業相談を受けるには?
ハローワークでは気になった求人について担当者が詳細を調べ、仕事への不安などさまざまな相談にものってくれます。これが「職業相談」です。
職業相談を受けるには
☆必要なもの:雇用保険受給資格者証・ハローワーク受付票
- 必要書類を持って総合受付へ行き、「職業相談希望」を伝える
- 番号札をとり、自分の番がくるのを待つ
- 呼ばれたら窓口で相談員と話をする
- 雇用保険受給資格者証の求職活動実績証明欄に日付と内容を記入してもらう
所要時間は待ち時間20~60分、職業相談5~10分という感じです。利用者が多いので、混雑に比例して待ち時間は増加します。
職業相談に時間制限はないですが、待っている人が多いと長居しづらい空気を感じるのが正直なところです。
もちろん気になる求人について詳細を聞いたり、就職に感じる不安を相談するために時間が長引くのは全然OKですよ。
職業相談は失業認定日と同日でも問題なく、求職活動実績1回分としてカウントされます。そのため、実績作りとして利用する人はかなり多い印象です。その分、混雑もしやすく…。
少しでも所要時間を短くしたい人は、ハローワークが空きやすい時間帯を狙うと良いでしょう。
職業相談ではどんな質問をするべき?
職業相談は、ただ窓口相談員と雑談すれば実績として認められるわけではありません。当然ですが「就職する意思」を示すために、就職につながる相談をする必要があります。
では、就職する意思を示しやすい相談とは?一番手っ取り早いのは、求人に関する質問することです。
事前に気になる求人をハローワーク求人検索システムからピックアップし、その求人について質問します。
あるいは、希望の求人を見つけるために知るべきことについて聞いてもよいでしょう。
参考までに、私が実際にした質問をまとめてみました。
職業相談窓口での質問一覧
- 求人が多く出やすい時期
- 男女比率や平均勤続年数
- 具体的な業務内容
- 転勤の有無
- 貸与制服の有無
- 試用期間の期間や待遇
- 業種・職種未経験者の入社率
- 繁忙期・閑散期はいつ頃か
- 月の平均残業時間
- 休日出勤の頻度
- 求人票記載の不明点
- 角の立たない持病の伝え方
- 効果的な履歴書の志望動機の書き方
- 自分の長所・短所の見極め方
- 自分に向いている仕事の見つけ方
- 人と関わりの多い・少ない仕事
- 職業訓練の具体的な内容
- 就職に役立つスキル・資格はなにか
私は結果的に5回ほど職業相談を利用しましたが、窓口相談員さんも実にさまざまでした。
親身になって話を聞いてくれる人もいれば、淡々とあいづちだけ打って終了する人も。
しかし、どの相談員さんもこちらの質問には真摯・迅速に答えてくれます。ハローワーク側に情報がない時は、電話で確認してくれたこともありました。
面接や履歴書の提出を強要されることはまずないので、初めて職業相談を利用する方は安心して行ってみてくださいね。
窓口で詳細を聞いた求人については、気になるようならその場で面接の希望を出しましょう。相手企業との面接日などを調整し、紹介状を出してもらえます。
「今回はちょっと合わないかな」と思ったら、一旦持ち帰って検討する旨を伝えてください。
どちらであっても、最後に雇用保険受給資格者証に職業相談実施の記録をつけてもらえます。これで職業相談は終了です。
失業認定報告書の書き方って?
雇用保険受給資格者証に記録してもらった求職活動実績は、自分で失業認定申告書に書き写す必要があります。
失業認定申告書で記入する項目
- 失業保険期間中に就職や就労、内職や手伝いを行ったか
- 行った場合はその内容
- 求職活動実績の詳細(日付・利用機関・内容)
- ハローワークや地方運輸局から仕事が紹介された場合にすぐ応じられるか
- 就職または自営した(または予定)場合の開始日や住所
- 申告書の提出日(=失業認定日)
- 受給資格者氏名(要捺印)
- 支給番号
「雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり」に詳しい書き方が載っているので、しっかり読み込んでから報告書に記入しましょう。
捺印が必要ですが、シャチハタなどスタンプ印は不可なのでご注意下さい。認印はOKです。
先述しましたが、この失業認定申告書の内容に虚偽が認められた場合、不正受給と判断される可能性があります。
単純な書き間違いであれば大丈夫ですが、ごまかしや誇張には一切の言い訳が立たないと認識しておきましょう。
失業保険はいつ支払われる?
無事認定された失業保険は、認定日より4~6営業日後にこちらが指定した口座に振り込まれます。
2~3ヶ月間の給付制限がある場合は、給付制限後最初の失業認定日から4~6営業日後です。
失業認定は4週間ごとに行うため、1度に振り込まれる最大は28日分になります。
失業認定日は変更できる?
原則として、失業認定日の日付は変更できません。ただし、やむをえない理由による日付の変更や、来所時間の変更は認められています。
やむをえないと判断される理由
- 就職した
- 面接や採用試験など選考にかかわるもの
- 各種国家試験や資格試験の受験
- ハローワーク等が実施する各種講習などの受講
- 就労不可期間が14日以内の病気・けが
- 婚姻やそれに付随する新婚旅行(社会通念上妥当な日数のみ)
- 6親等以内の血族および3親等以内の姻族の婚姻・看護・危篤・死亡
- 子や弟(中学生以下)の入園式・入学式・卒園式・卒業式への参加
- 天災や交通事故 etc
やむをえない理由で認定日を変更したい場合は、必ず事前にハローワークへ相談し、指示を受けましょう。事前相談もなしに勝手に変更しても、認められない可能性があります。
変更には上記理由を証明する書類など必要ですので、こちらも準備しておきましょう。
なお、30分単位で指定される時間枠については多少前後しても問題ないようです。
実際、少し早めに到着した際にその旨を伝えたら、待たずにその時間の枠で認定を受けられました。同様に、電車遅延など遅れて到着しても特にペナルティなどありません。
時間変更は気軽にできますが、そもそも時間を指定するのは混雑状況を減らすため。できる限り指定時間を守った方が、お互いにスムーズな行動につながりそうですね。
失業認定日はハローワークへ離職票を提出した日(受給資格決定日)を基準に決められます。
特定の曜日・時間を失業認定日時にしたい人は、離職票の提出日をその曜日・時間にあわせると良いでしょう。
認定日をうっかり忘れてしまった!どうなる?
やむをえない理由がなく失業認定日に申告書を提出できなかった場合、直前4週間分の失業保険は受け取ることができません。
求職活動実績の有無に関わらず「当該期間分については不認定」となります。
あくまで不認定になっただけなので、所定給付日数の残日数が減るわけではありません。今回の支給分が、先送りになるだけです。
受給期間内であれば、再度求職活動実績を失業認定日に申告することで受け取ることができます。
もしも、うっかり認定日に申告を忘れてしまったときは
- 次回認定日(4週間後)の前日までにハローワークへ行く
- 総合受付で前回認定日に来るのを忘れた旨を伝える
認定日に行き忘れた場合でも、次回認定日に変更はありません。
忘れた事に対するペナルティも特にありませんが、あまり何度も忘れると「就職する意思がない」とみなされる可能性はあります。
きちんとスケジュールを確認するなどして、できる限り忘れないようにしたいですね。
失業保険受給中に病気やけがで働けなくなったら?
受給資格決定以降、病気やけがによって働けない状態が15日以上続く場合、基本手当に代わって傷病手当を受けることができます。
以下の場合は、傷病手当の支給を受けることができません。
- 健康保険等他法律に基づいた傷病手当金を受けている
- 休業補償給付等の支給を受けている
- 待期期間中である
- 給付制限期間中である
「病気やけがにより就労不可」な時点で、「失業の状態」を満たす条件の1つである「健康状態に問題がない」に齟齬が生じます。
医療機関から診断がおりたら、速やかにハローワークへ傷病手当(への切替)を申請しましょう。
病気やけがにより働けない状態が30日以上続く場合は、最大4年間受給期間を延長することができます。
延長期間内に病気やけがが治癒すれば、基本手当の支給を再開することが可能です。
傷病手当は、
- 支給金額は基本手当と同じ
- 所定給付残日数も変更なし
- 求職活動実績は不要
なので、安心して療養に集中することができます。
傷病手当の申請には、
- 傷病手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
の2点が必要です。代理人が申請する場合は、委任状も準備しておきましょう。
「就労不可」の診断が出た日以降最初の認定日までに、ハローワークで傷病の認定を受ける必要があります。
必要書類や提出時期など詳細についてはハローワークから指示がありますので、診断が出たらすぐ連絡してください。
私は失業保険受給半ばに「身体障害(2級)により就労不可」と専門医から診断がおりました。
働けない期間は30日以上ですが難病のため治療のめどがたたず、延長ではなく傷病手当への切替を申請することにしたんです。
受給開始から91日目、診断書が届いたその日(次回失業認定日まで2週間)にハローワークへ電話で連絡。担当者の方へ事情を説明し、
- 支給終了日翌日以降の日付で傷病手当支給申請書を診断医に作成してもらうこと
- 申請書ができ次第、雇用保険受給資格者証と一緒に郵送すること
- 事務処理後、雇用保険受給資格者証は返送されること
との指示をいただきました。
私の場合は自宅から出ることも困難だったため、郵送での申請ができるのはありがたかったです。
その後、専門医へ傷病手当支給申請書の作成を依頼、届いた診断書と必要書類をハローワークへ提出。ほどなくして、所定給付残日数分の失業保険がまとめて振り込まれました。
働く意思があるのに身体的理由で働けなくなると焦ると思いますが、慌てず速やかにハローワークへ連絡してみましょう。
支給完了編
まめな求職活動に4週に1度の失業認定申告…長きにわたり(?)お疲れさまでした。
毎月欠かさずハローワークへ通ってきた日々も、最終失業認定日をもって終わりを告げます。
最後まで気を抜かずにいきましょう。
最後の失業認定日に受け取るものは?
最後の失業認定日は、所定給付残日数がゼロになった日またはその翌日以降に設定された認定日です。最後と言っても、やることは今までとなんら変わりません。
虚偽なく求職活動実績を記入した失業認定申告書と雇用保険受給資格者証、訂正時のみ使用する印鑑を持ってハローワークへ向かいましょう。
最後の失業認定日では、
- 今までと同じく失業の認定を受ける
- 新しい失業認定申告書は配布されない
- 処理状況に「支給終了」と印字された雇用保険受給資格者証を渡される
今回で支給期間全てに対する失業認定が終了するため、次回分の失業認定申告書はもう渡されません。
同時に、雇用保険受給資格者証も不要になることから「支給終了」と印字され、渡されます。その際に「2年間は自宅保管してください」と言われました。
万が一、支給済みの失業保険について何か確認するべきことが発生した時のためでしょう。
雇用保険受給資格者証は失業保険の受給証明になるため、税金や健康保険など社会保険料関係で証明書として使う可能性も考えられます。
実際に、私は自身の無収入を証明するために非課税証明書と一緒にコピーを提出しました。
今すぐ使うことはないかもしれませんが、念のため2~3年は保管しておくと安心です。
支給が終わったら、もうハローワークは利用できない?
すべての失業保険の支給が終了した後も、ハローワークを利用することは可能です。
最後の失業認定手続き後の案内でも「ハローワークにいつ相談にきても大丈夫ですからね」と優しく言っていただけました。
次に就職する勤務先で一定期間雇用保険に加入しない限り、失業保険のことでハローワークに通うことはもうないでしょう。
しかし、求人探しや職業相談などはハローワーク受付票を持参すれば、いつでも対応してもらえます。頼れる場所があるということを忘れずに、就職活動の励みにしたいですね。
まとめ|初めての失業保険でも大丈夫!
この記事では、失業保険に関する27の疑問について、ご紹介しました。
「仕事を早く見つけなきゃ」という焦燥感のなか、初めてふれる制度を利用することに不安を覚えるのは至極当然なことです。私もそうでした。
本記事の内容が、少しでもその不安を和らげるために役立つよう、心から願っております。